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「新人のミス」では済まされないメールアドレス漏洩問題

これから夏にかけて、研修が終わった新入社員が現場に投入される。会社も一段と活気づく時期だ。しかし、その新人投入により頻発する「個人情報漏洩事故」がある。

それは、メールの誤使用によるものだ。広報や営業など、多人数にメールを送る際、「To」や「CC」を何のためらいもなく利用してしまう事故が多発する。ベテランでも簡単な操作ミスから同事故は発生する。経験も少なく、さらに現場になれていない浮き足だった新人であれば、さらに事故の可能性が高まるであろう。

以前なら、このような事故が起きた場合、クライアントや顧客、取引先からの苦情が殺到しても、「以後、このようなミスがないよう努めます」といったメールを送れば事態も沈静化した。

しかし、ここ1年で事情は一転した。メールアドレスの流出は、「個人情報流出」として注目を浴び、社会的責任が問われるようになっている。実際に、日銀や地方のインターネットプロバイダで同様のミスを犯し、謝罪している。

「メールアドレスだけなら個人情報ではないのでは?」との指摘もあろう。たしかに、メールアドレスだけでは個人を特定できない場合もあり、そのような場合、個人情報保護法では「個人情報」として扱われない。

しかし、消費者意識は明らかに違う。とあるシンクタンクの調査結果では、 50%強が「メールアドレスを個人情報だと思う」と回答している。こうなれば、「合法」「違法」関わらず、企業イメージへのダメージは必至だ。

「リーチ情報」という概念をご存じだろうか? 個人情報漏洩問題に詳しい弁護士 牧野二郎氏は、4月に都内で行われたある講演で「今後は、リーチ情報も注目が集まり、浸透していくだろう」と語っている。

「リーチ情報」とは現在の個人情報から一歩踏み込んだ概念で、メールや電話番号など、個人は特定できなくとも、本人にリーチできる情報のことだ。個人を特定できなくとも、それら情報がひとたび公になれば、あらゆる情報が手元に否が応でも届けられてしまうため、消費者にとっては、非常に重要な情報と言える。これらの管理責任が問われるのも時間の問題だろう。

メールは「身近なツール」となった。新入社員も学生時代から利用しており、なじみがある。だからこそ漏洩の「スキ」が生まれてしまう。しかし、新社会人のミスでは済まされない損害を負うこと可能性がそこには潜んでいるのだ。

今こそ、しっかりとした「個人情報漏洩」の問題意識を教育し、同時に技術的な知識を与え、現場のセキュリティの意識を向上させることが重要な時期と言えるだろう。

(Security NEXT - 2004/05/07 ) このエントリーをはてなブックマークに追加

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