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地域を超えるサイバー攻撃、日チェコ協力で高まるレジリエンス

首都プラハをはじめ、美しい町並みで知られるチェコ共和国。国民楽派の作曲家スメタナによる「モルダウ」やミュシャの絵画作品など、同国の文化は日本でもなじみ深い。

そのチェコの国家サイバー情報セキュリティ庁(NÚKIB)と日本の国家サイバー統括室は、2026年3月にサイバーセキュリティ分野における協力覚書を締結。両国におけるサイバーセキュリティの連携関係はあらたな段階を迎えた。

チェコは、EU加盟国として早い段階からインド太平洋地域にサイバー分野の専門官であるサイバーアタッシェを派遣するなど、日本を含む同地域を重視する姿勢を示している。

同国を、セキュリティ分野においてコンシューマー向けマルウェア対策ソフト「Avast」「AVG」の祖国として認識している人も多いだろう。一方、同国が進める国家レベルのセキュリティ施策は、日本では必ずしも広く知られていない。

今回、同国が進めるセキュリティ施策の考え方や、日本との協調により目指す成果について、NÚKIBで副長官(Deputy Director)を務めるMartina Ulmanová氏らに話を聞いた。

「AVG」「Avast」を生んだチェコ、国家レベルのレジリエンスへ

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NÚKIBで副長官を務めるMartina Ulmanová氏

Security NEXT(以下SN):チェコ国内では「Avast」や「AVG」といったセキュリティ製品が誕生し、コンシューマ向けセキュリティ製品の世界において古くから注目されてきたが、現在、チェコでは国としてどのような分野のセキュリティに力を入れているのか。

NÚKIB:チェコのサイバーセキュリティエコシステムの発展は、技術環境および脅威の性質の変化と密接に結びついている。従来、一般消費者向けセキュリティ製品分野におけるチェコの強みは重要な基盤だったが、現在の国家政策は、社会におけるデジタル技術への依存の高まりと、それらが国家の重要機能において果たす役割を反映した、より体系的なアプローチへと移行している。

特に力を入れているのは重要インフラの保護と、そのレジリエンスの確保だ。個別システムの保護から、運用継続性全体の保護および危機的状況に対処する能力の確保へと重点を移している。脅威の早期検知、継続的モニタリング、予防に基づくプロアクティブなアプローチを重視している。

もうひとつの重要分野が、サプライチェーンセキュリティだ。技術の複雑化とICT環境のグローバル化により、技術そのものだけでなく、供給者の信頼性にも関わるあらたなリスクが生じている。リスクを体系的に管理し、規制面および組織の実務的意思決定に反映させることを重視している。

こうした政策を具体的な技術や運用へ落とし込むため、NÚKIBはサイバーセキュリティ分野の国家調整センターとして、研究機関、大学、スタートアップ、中小企業、産業界を結び付ける役割も担っている。関係者間の距離が比較的近く、研究、技術開発、実装を迅速につなげられることが、エコシステムの特徴にもなっている。

SN:ロシアや中国をはじめ、国家主体によるサイバー活動が観測されている。チェコや欧州にとって国家主体による脅威をどのように評価しているか。安全保障環境は、チェコ国内のサイバーセキュリティ政策、産業、技術開発の方向性に影響しているのか。

NÚKIB:NÚKIBの観点から見ると、国家主体による活動は、チェコおよび欧州にとって、長期的にもっとも重大かつ複雑なサイバー脅威のひとつだ。これらの活動は、高度に洗練され、長期にわたって継続し、各国の地政学的目標と密接に結び付いている。

現在の安全保障環境は、ロシアによる2022年以降のウクライナ侵略や中華人民共和国の影響力拡大によって大きく左右されており、その結果、こうした活動の強度と範囲はさらに拡大している。

ロシアによるサイバー作戦は、近年の欧州において特にウクライナ戦争との関連で顕著に現れている。これには、重要なシステムやサービスを損傷または機能停止させることを目的とした攻撃、サービスの可用性を狙った攻撃だけでなく、ウクライナを支援する国家を対象とした広範なキャンペーンも含まれる。こうした活動は、他のハイブリッド戦術と連携して実施されることが多く、戦略的圧力の手段として機能している。

また中華人民共和国に関連する活動も重大な脅威だ。長期的なスパイ活動、戦略情報の取得、重要インフラのマッピングを目的とした活動が観測されている。

チェコは2025年5月、NÚKIBの分析および情報機関の評価に基づき、少なくとも2022年からチェコ外務省を標的としていたサイバーキャンペーンを、中国国家安全部と関連付けられる「APT31」によるものと公式に帰属認定した。この措置に対しては、EU、NATO、インド太平洋地域のパートナー諸国による協調的な対応が続いた。

同時にNÚKIBは、米国やオーストラリアなどのパートナー国と共同アドバイザリや分析報告作成に取り組んでおり、これらのパートナーはロシアや中国に関連する活動について繰り返し警告を発してきた。こうした事例は、サイバー空間が現代の紛争や国家間の戦略的競争における不可欠な領域となっていることを示している。

こうした状況は、チェコのサイバーセキュリティ政策の方向性にも直接反映されている。2026年から2030年までの国家サイバーセキュリティ戦略では、国家主体の能力向上およびサイバー作戦の深刻化を踏まえ、レジリエンス強化、プロアクティブな対応、EUおよびNATO内での緊密な国際協力を重視している。

さらに、この傾向は産業界および技術発展にも大きな影響を与えており、サプライチェーンの安全性、リスクの高い技術依存の低減、供給者の信頼性確保が強く重視されている。

NÚKIBは2025年、中国に関連する技術やサービスに伴う安全保障上のリスクについて警告を発した。対象にはICT、クラウドソリューション、AI利用システムなどが含まれる。また、供給者リスクを問題視するようになったのは最近のことではなく、2018年にはHuaweiおよびZTEの製品、技術の利用に関して警告を発している。

ただし、NÚKIBは技術的中立性を基本原則としており、特定の製品や企業を推奨する立場にはない。安全保障上のリスクを評価し、組織の調達や運用上の判断へ反映させる考え方だ。

こうした問題意識は国内の規制にとどまらず、特にNIS2指令を中心としたEUの規制枠組みの実施にも反映されている。

国家主体による活動は、サイバーセキュリティが現在、国家安全保障および経済政策の不可欠な一部として認識されるようになった大きな要因と考えている。チェコでは、防御能力の強化だけでなく、グローバルな脅威に効果的に対処するために不可欠な国際協力への積極的関与も強化している。

(Security NEXT - 2026/08/20 ) このエントリーをはてなブックマークに追加

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