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捜査による位置情報取得、プライバシー侵害へ懸念 - 日弁連が声明

日本弁護士連合会は、捜査機関の要請による電気通信事業者の位置情報取得について、国会審議を経た刑事訴訟法の改正により、厳密な運用を行うよう求める会長声明を発表した。

総務省では、2015年6月に「電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン」を改正。捜査機関では、裁判官の検証許可状を得ることで利用者本人に通知せず、電気通信事業者より携帯電話の位置情報を取得することが可能となったが、広くプライバシーを侵害するおそれがあるとして、日弁連が声明を発表したもの。同連合会では2015年5月22日にも、ガイドライン改正に反対する意見書を公表している。

日弁連は、本人が知らないうちに一方的に位置情報を取得されている点を挙げ、事後にも知らされないため、取得の違法性を裁判で争うことも難しいと指摘。

裁判官による検証許可状が必要となるが、裁判官が取得する情報を事前に把握できず、事後に抹消を命じる権限もないとし、さらに被疑者に限らず事件に関係ない位置情報も対象になる可能性があるとして、プライバシー侵害への懸念を示した。

すでにガイドライン改正の影響で、大手携帯電話会社が2016年5月以降に販売を開始したスマートフォンにおいて、位置情報取得時の通知を中止しており、こうした動きが旧端末や他社へ波及する可能性もあるとしている。

同連合会では、重大な問題であり、省庁の裁量で判断したガイドラインではなく、国会で審議を尽くす必要があると主張。刑事訴訟法の改正または特別法を制定し、「対象犯罪の限定」「対象者を被疑者に限定」「位置情報の不可欠性を要件とする」「実施後の対象者への通知を定める」など厳格な運用が必要とした。また総務省に対し、ガイドラインの改正で削除された要件の復活をあわせて求めている。

(Security NEXT - 2016/08/10 ) このエントリーをはてなブックマークに追加

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