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村上春樹氏の図書貸出履歴報道「是認できない」 - 日本図書館協会

作家村上春樹氏が高校在学中に貸出を受けたとみられる蔵書の図書カードが神戸新聞に掲載されたことを受け、日本図書館協会は、「プライバシーの侵害」とし、報道を是認できないとの見解を示した。

10月5日の神戸新聞夕刊や同電子版に、同氏が在学していた県立高校で同氏の氏名が書かれた図書カードが見つかったとして、同カードの写真が掲載されたもの。カードには、村上氏以外の生徒の貸出記録も残っており、氏名を確認できる状態だった。

同記事に対して問題視する声が挙がったことから、神戸新聞では、翌日より電子版の図書カードの写真掲載を中止。記事データベースでも紙面の画像掲載を取りやめた。

また日本図書館協会にも、図書館が利用者の読書事実を外部に漏らさないことを宣言した「図書館の自由に関する宣言」に抵触するのではないかとの問い合わせが寄せられたという。

同協会では、今回の問題を受け、神戸新聞社、26日に該当の県立高校を訪問して調査を実施。神戸新聞社では、村上氏以外の生徒の氏名を隠さなかったのは配慮不足だったとする一方、社会的に注目を集める村上氏の読書歴は、研究資料としての価値があり、報道することは公益性が高いと判断したと説明。記事を引き続き掲載している。

同校では、20年以上前に除籍処分となり廃棄予定の元蔵書から、ボランティアの旧職員がカードを発見し、貴重な資料と判断して新聞社に情報提供したと説明。外部の人間に図書カードを見せたのは不適切だったとした。

同協会では、図書館利用者の読書記録は図書館が職務上知りえた秘密であって、適切に管理する必要があると指摘。個人情報保護条例上、本人に同意なく図書館が第三者へ提供することは認められず、地方公務員法上の守秘義務もあると指摘。

また神戸新聞に対しては、図書カードを適切に入手した場合でも、利用者のプライバシーの侵害となり、同意を得ずに報道することは是認できないとの意見を表明した。

図書館が利用者の秘密、プライバシーを守ることは、自由な読書を保障して知る自由を守るために不可欠であり、「図書館は利用者の秘密を守ることは、図書館活動に従事するすべての人びとが守らなければならないこと」とし、図書館の理念への理解を求めている。

(Security NEXT - 2015/12/01 ) このエントリーをはてなブックマークに追加

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